また、暖かい風がやってきて、キャンバスはいっそうにぎやかな野原になります。

お元気ですか。
また春がきました。タンポポも咲きはじめました。
ポケットに鳩の餌を入れ、クロとチロをつれて
海の見えるお寺の方へサンポにいきます。
クロは七年前早春の公園に、チロは三年程前お寺に来た
すこし眼の見えない迷い犬です。
クロをみつけたお寺の鳩がむかえにきます。
私の家にいた真白い孔雀鳩も仲間入りしています。
お寺の公園では、顔見知りの猫や犬と挨拶します。　　　　　　　　２６、２７ページ

裏の空地の木立で、一羽だけ育ったカラスの子が、
いつまでも親に餌をねだっています。
朝早くアトリエのトタン屋根を歩きまわったり、
窓から家の中をのぞいたり、
ミルクパンをなげてやるとカアカア母親にねだっています。
キジ鳩は噴水で水あびして公園の方に飛んでいきます。
コゲラが栗の枝をコツコツのぼっていきます。
みんなが静かな午後でもカラスの親子は近所の屋根で遊んで、
ゴミ捨て場にいる猫のシッポをそっとつついたり・・・・・・・　　　２８、２９ページ

栗の枯れ葉の秋になると、狸のポコのこと、
十三年いっしょだったアフリカのオサルのチーコのことや、
ジュッピー、ベルやモックの犬たちや猫、リス、兎、キジ、チャボ、
たくさんの小鳥など三十年もの友達を、栗の木はおぼえていて、
庭いっぱい楽しかった思い出をちらします。
枯れ草の中を飛びはねたチーコ、
おっかけっこをしたベルや猫たちのこと、
みんなすばらしい思い出です。　　　　　　　　　　３０，３１ページ

日が暮れると、リスが一番に巣箱に入ってしまいます。
小鳥たちも静かになり、夕飯がすむと、
私達も今日一日がすんでおちつきます。
クロは二階の私のベッドに上がっていきました。
以前は、ストーブの廻りには猫たちが集まって、
チーコは湯タンポのベッドにもぐり、
狸までひとり石油ストーブにあたっていましたが、
ずいぶん淋しくなりました。
北風がやんで明日は雪になりそうです。
では、おやすみなさい、また。　　　　　　　　　　　　　　　３２，３３ページ

小林先生と暮らした動物たち。いなくなっても、絵に描いたり、言葉に出すことで
先生といっしょにいつまでも生きつづけました。

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