日、独で絵本を出版した
           桑名の小林研三さん                年代、新聞名不明

近況心境  豊かな自然と、そこに遊ぶ動物が主題

三重県桑名市徳成町の小林研三画伯(五六)宅の玄関を入ると、黒犬がほえ、オームがキーキー
と鳴いた。現在、この家には他にインコ十羽、ウサギ、リス、ハト五羽、文鳥、ジュウシマツ、サギ、
そして池にドジョウがいる。それらに注ぐ小林夫妻の愛情は少々ケタはずれと思えるほどだ。
だから彼の作品と生活は直結している。自宅の周辺に、十年前までは在った豊かな自然と、そこ
に遊ぶ動物たちがいつも主題だ。
十二点を収めた「のはらのちいさないえ」がこんど本になって出版され、ドイツ語版も出る。
「たまたま私の絵をドイツ人が見て、ノーゲボーエルという出版社が出してくれることになったんで
すが、こんな小さな本に三年かかり、全く商業主義ではないんです。主人は他に勤めをもって、
出版で食べているわけではない。そういう小さな出版社がドイツには多いと聞きました」
一昨年五月には、その出版社のきも入りで、オーストリアのザルツブルグで油、水彩、エッチング
の作品四十五点をならべて個展をした。日本と同じ値段なのに、ほとんど売れた。小林氏も招待
されて出かけたが、展覧会を見にきた市の職員が、即座に決断してアトリエ付きの市の迎賓館の
カギを渡し「ご自由にお使い下さい」と三週間も泊めてくれた。冷蔵庫には食料品がいっぱい。
アトリエには版画のプレス機も紙も十分にある。「びっくりしました」。
絵本の原画展が東京都名古屋の丸善で、作品展が一月の桑名展につづいて、二月十六日から
名古屋で、四月には札幌で、五月には三重県津市で開かれる。売れっ子のようだが「ぼくの絵は
本当に好きな人がたまに買う程度、ドイツでのように売れません。だから何回もできる」と笑った。

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